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治療的アセスメントの歴史

 

「治療的アセスメント」という用語は,1993年にStephen Finnによって生み出されました。彼は,テキサス州オースティンの治療的アセスメント・センターで同僚と共に開発した,協働的心理アセスメントの半構造化された形式を記述するための用語を必要としていたのです。FinnはConstance Fischer, Leonard Handler, そしてCaroline Purves等の研究を引用しました。いずれもみな協働的アセスメントの先駆者です (文献 のページをご覧ください。文献,研究論文,そして上述した3人のDVDが紹介されています)。 Finnはその初期に持っていた関心について,著書である In Our Clients’ Shoes, の中で,クライエントに大きな治療的変化をもたらしたあるアセスメントの実際と共に記載しています。この体験は,心理アセスメントの治療的な可能性への関心を,Finnに呼び起こしたきっかけとなりました。1984年,Finnはテキサス大学オースティン校における臨床心理学プログラムの教員となり,そこで治療的アセスメントの臨床的方法に関する試みをはじめました。この研究は最終的に,彼とMary Tonsagerによって,先駆的な二本の論文としてまとまり,治療的アセスメントの有効性が記述,検証されました (1992, 1997). FinnとTonsager (2002) では,人間的で協働的なアセスメントの技法を治療的アセスメントに統合することについて記されています。

 

 

治療的アセスメントの研究

 

Finn and Tonsager (1992) は治療的アセスメントについて,統制群を用いた初めての効果研究を,大学のカウンセリングセンターで心理療法の開始を待つ大学生を対象として実施しました。大学生はランダムに以下の2群,支持的な非指示的カウンセリング (n = 29) 群または短期の治療的アセスメント群 (n = 31) に割り当てられました。後者は治療的アセスメントの初回面接,MMPI-2,そしてまとめと話し合いのセッションから構成されていました。期間(どちらの群も臨床心理面接を2回実施されます),そして自己報告式の精神症状評価尺度と自尊心尺度のベースラインが等しくなるように調整されました。これらの介入がなされた直後のデータでは,治療的アセスメント群の大学生は統制群に比べ有意に自尊心の向上を示していました (Cohen’s d = .38) 2週間後の事後調査においても,統制群に比べ精神症状の少ない状態 (d = .36) と自尊心の向上した状態 (d = .46) が持続することが示されました。治療的アセスメント群はまた,統制群に比べ,生活上の問題に取り組むために必要な自分自身の能力について,より多くの希望を持っていることを示していました (d = .96).
 

オーストラリアのNewman and Greenway (1997) は,Finn and Tonsagerによる研究の追試を行い-得られた効果量(effect size)は先行研究より若干小さかったのですが-,より優れた研究デザインを提示しました。治療的アセスメント群だけでなく統制群にもMMPI-2を実施したのです(統制群は全ての研究手続きが終了した後に,MMPI-2のフィードバックを受けました)。そして再度,自己報告式の精神症状尺度と自尊心尺度の結果の向上は,短期の治療的アセスメント群に認められました。

 

Ackerman, Hilsenroth, Baity, and Blagys (2000)は,Finnの手続きを若干変更しました。治療的アセスメントを受けたクライエントと伝統的な心理アセスメントを受けたクライエントについて,臨床家との治療同盟の形成,そして治療の上でなされる推奨にどのくらい従うのかという点に着目して,比較を行ったのです。治療的アセスメントを受けたクライエントは,実施された手続きについて,より価値があり,パワフルで特別,そして充実したものであったと評価し,査定者との関係性はより肯定的で,伝統的な非協働的心理アセスメントを受けた群に比べ,心理療法でなされる推奨をより受け入れる傾向(33% vs. 13%)にあることがわかりました。Hilsenroth, Peters, and Ackerman (2004)は,治療的アセスメントの肯定的な影響が,アセスメント終了後の心理療法においても継続されることを示しました。協働的アセスメントを受けたクライエントは,伝統的アセスメントを受けたクライエントに比べ,セラピストとの治療同盟を有意に高く評価していたのです。

 

Tharinger, Finn, Gentry, Hamilton, Fowler, Matson, Krumholz, & Walkowiak (2009) は,14名の子ども(12才以下)とその母親的養育者について,8セッションに渡り実施された治療的アセスメントの研究を行いました。アセスメントの後,子どもと母親は共に症状の低減とより肯定的な家族環境を報告し,母親は自分の子どもに対して,より肯定的な,否定的でない見方を感じるようになっていました。子どもと母親は共に,治療的アセスメントの体験について非常に満足していました。

 

まとめると,様々な研究から得られたデータは,治療的アセスメントが伝統的な心理アセスメントに比べより肯定的な影響をクライエントに与えることを示唆します。治療的アセスメントの手続き自体が,良い変化を及ぼすための短期的介入を含んでおり,だからこそ成人と子どもの両方に対して,効果的にはたらくのだと思われます。

 

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